ラディカ・ナハト・ミツルギ大佐。 滅びの未来より、意図せず時をさかのぼってきた少女。 家柄は古武術の名門であり、先祖代々ドケチであったために 貯め込んだ資産が王国に資本力として認められ、 祖父の代から下級貴族となった。 ----------------------------------- 『吉凶の蒼い月(ラディカ)』。 世の中に大きな異変が起こるとき、月は蒼く輝くと言い伝えられてきた。 ――目が覚めると、街が燃えていた。 見回せば人の気配は既に無く、瓦礫と化した街を悪魔の軍勢が跳梁跋扈していた。 悪魔たちに追い回され絶望した少女は、蒼くたたずむ大輪の月が満面に映る湖に 身を投げた。 ――再び目が覚めると、そこは20年前の湖畔だった。 「……こんなことがあり得るのだろうか?」 しかし20年も猶予があるならば、あの滅びの未来を回避できるかもしれない。 もう、夢でも幻でも良かった。 軍勢に対抗するには、こちらも軍勢が必要だ。 武家の名門の生まれながら心優しかった少女は 剣を手に取り、『戦士』という殺しの道を歩み始めた。 多感な年頃の少女は、滅びの世界を目の当たりにしてしまったことで 大半の感情と表情とを失っていた。
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