◆最初に 「北の地とひとりの少女~コロポックルの願い~」という乙女ゲームのSSだと思っていただけると有難いです。 ここだけの限定SSです。よければ、読んでみてください。 気に入った人はフォローいただけると嬉しいです。 舞鈴桃が硝瑚と知り合いになったのは、幼稚園の頃だった。 舞鈴桃の家族と共に引っ越してきて、そのあとに硝瑚と出会ったのがきっかけだ。 「はじめまして、オレはショウゴ! よろしくね! えーっと……」 「……まりも」 「まりもって言うんだぁ。かわいいなまえだね!」 そこで話をしたのが始まりだった。 硝瑚はこの時から、舞鈴桃の事が気になっていたようだ。 そこから彼はよく彼女にかまうようになる。 「まりも、よくたべるねー! たべるのがすきなの?」 「……うん。おいしいものをたべるとシアワセになれるから」 「たしかに……? おいしいものってやっぱり、いいよね」 「……きょうのおべんとうもおいしい」 舞鈴桃のいた幼稚園のクラスの人達は舞鈴桃の事を変わり者と思っている。 そのせいで、硝瑚以外に話しかける者がいない。 小学生になっても、舞鈴桃は硝瑚と一緒にいる事が多かった。 相変わらず、舞鈴桃はマイペースなせいかクラスの人達はあまり舞鈴桃を相手にしない人ばかり。 そんな事も気にせず、硝瑚は舞鈴桃のそばにいた。 「まりも~! 今日もいっしょにかえろう!」 「……うん、いいよ」 「まりもはさ……」 「うん? どうかしたの?」 「友達とか作ろうと思わないの?」 「……ショウゴがいるから、問題ない」 「んー、まぁ……そっか。おまえって本当にマイペースだよね」 「……? うん、そうかも。よく言われる」 硝瑚はこの時…… ――ずっと彼女のそばにいよう。 そう思うようになった。舞鈴桃に何かあっても困ると考えるからだろうか。 中学生の時も、舞鈴桃は硝瑚と一緒にいる事が多かった。 幼稚園と小学生の時と違うのは舞鈴桃も同性の友達が少し出来た事だろう。 「ねぇ、呉城さん。ちょっと聞いてもいい?」 「……うん? どうかした?」 「呉城さんって、小田瑠くんと一緒にいる事が多いよね」 「……うん。硝瑚とはよくいるかな」 「呉城さんは小田瑠くんの事をどう思っているの?」 同性の友達にそんな事を聞かれる事もあった。 舞鈴桃はいつもその時はこう答えている。 「……硝瑚は大切な幼馴染だよ」 「そうなんだ。てっきり、付き合ってるのかと思った~」 「……そういう関係ではないよ」 だが、舞鈴桃にとっては大切な幼馴染という事には変わりない。 いつもそばで笑ってくれる硝瑚だからこそ、一緒にいたいと思う。 高校になっても、同じ学校に通う事になる。 以前よりは一緒にいる時間が少し減った気がするが、それでも毎日顔を合わせているくらいだ。 「おっ、舞鈴桃じゃん! おはよう!」 「……おはよう、硝瑚。今日も君は元気そうだね」 「お前も相変わらずだな、舞鈴桃」 そんな他愛のない話をする時もある。 お互いにこの関係が心地よく感じている部分はあるのかもしれない。 「おーい、舞鈴桃~?」 「……ん? 硝瑚、どうかした?」 「いや、お前がボーッとしてたから話しかけたんだけど」 「……ごめん。ちょっと昔の事を思い出してた」 これが舞鈴桃と硝瑚の昔の話だ。 舞鈴桃はその事をふと思い出していた。 「もしかして、俺の事を考えてた? ……なんてね」 「……ん? そうだね」 「へぇ、そうなんだ。って、え? 本当に?」 「……うん。硝瑚との出会いの事を考えてた」 「そういえば、呉城さんは小田瑠と幼馴染だったな」 そう、今は塩十朗も含めてジンギスカンパーティーをしている最中だったのだ。 コロルがいなくなってから、時が少し経ったが三人は変わらず仲良くしている。 ……唯一、あれから変わったのは舞鈴桃が硝瑚と付き合っているという点だろうか。 「今は恋人だけどね! ははっ」 「……ノロケるのはやめてもらえるだろうか」 「いいじゃん! こんな時だからこそだよ」 「……ふぅ、言っても無駄のようだな」 「そんな事を言う奴は、アレを口に入れるよ?」 「……アレはもう勘弁してもらいたい」 「アレって、美味しくないしね……塩十朗も被害者になったし」 アレというのは、あの恐ろしいキャラメルの事だ。 塩十朗は軽く、アレについてはトラウマレベルになっているらしい。 「それはそうとして、何でまた昔の事を思い出してたの? 舞鈴桃」 「……なんとなく?」 「ちぇ~、聞いて損したなぁ」 「呉城さんに期待する方が悪い」 「うっ……まぁ、否定は出来ない」 「ふふっ」 舞鈴桃は思わず声を出して笑う。 それを見た硝瑚と塩十朗は不思議に思った。 「こうして、楽しめるのもやっぱり硝瑚がいてくれたおかげだね。有難う」 「あ、うん。舞鈴桃が楽しいなら、俺はすっごく嬉しいよ」 「……僕も楽しく感じる。これも二人のおかげだな」 「へへっ、そう言われるのも悪くないね」 そんなお昼時のジンギスカンパーティー。 楽しい日々や思い出はこれからも続くだろう。 -FIN-
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