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E-Novel Desk

2023/08/18 14:05

藤子・F・不二雄ミュージアムのどら焼きを食べたらキユーピーへの好感度が上がった話

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 藤子・F・不二雄ミュージアムのどら焼きがおもしろすぎる。


 今日、藤子・F・不二雄ミュージアムに行ってきたという家族からお土産でどら焼きを分けてもらった。

 私は食品を手にした時、とにもかくにもまずは裏の食品表示を見ることにしている。活字中毒かつ料理趣味かつ健康オタクな私にとって、食品表示は垂涎の情報系嗜好食品だからだ。読むの超楽しい。

 なので、件のどら焼きも即行でパッケージを裏返──すのは中身が心配なので、箱を天へと掲げてその下に目を潜り込ませた。これが健康オタク不審者の型その壱【仰天の構え】である。

 そして驚いた。このどら焼き、おもしろい原材料を使ってるぞ──!

 大量生産のお土産系お菓子は、良く出来てはいるが食品表示的に目新しいものはあまり多くない。使われる原材料はたいてい小麦粉、卵、植物油脂、マーガリン、砂糖、人工甘味料、保存料、香料に+αと言った具合だ。いずれも低価格で品質を担保できる優れた食材・添加物だが、お土産なのだからもうちょっと美味な情報を盛り込んで欲しいと常々不満に思っていた。

 しかしこの「藤子・F・不二雄ミュージアムのどら焼き」(以下、「F-どら焼き」とする)は違う。写真を撮ったので、ぜひ諸賢にもご覧になって欲しい。

 食品表示を見慣れていない方に説明しておくと、原材料名は基本、使用量の多い食材から順に記載される。

 ただ、このどら焼きのように、餡と生地で分けて記載されている場合はその限りではない。注意が必要だ。


 さて、原材料の大部分はどら焼きの基本材料だ。

 餡の小豆と甘味料。生地の卵、小麦粉、甘味料、油脂。

 よく見慣れたもので、特段おかしなところはない。

 最後辺りのトレハロースは人工甘味料。乳化剤(界面活性剤)と膨張剤(ベーキングパウダー的なやつ)は生地の食感などのために添加しているもの思われる。おそらく工場生産の生地なので、品質安定のために使っているのだろう。気温とか湿度の関係でうまく生地が膨らみませんでした、とかなったら売れなくて大損だし仕方ない。

 むしろ加工食品の中ではかなり添加物控えめなので安心できる部類だ。甘味料たっぷり(=日持ちする)な関係で保存料系を使わなくていいというのが大きいだろう。

 ちなみに購入日は8/16で、賞味期限は8/24日だった。お菓子としては十分な日持ちだ。


 しかしお土産お菓子セオリーからは外れた、見所とも言えるポイントがこの食品表示には随所にちりばめられている。

 第一の注目ポイントは、小豆粒餡の「米飴」と「(広島県製造)」だ。

 米飴とは水飴の一種である。現代の水飴はデンプンやらをナンチャラカンチャラして作るのだが、米飴はお米を原材にしてナンチャラカンチャラした水飴だ。

 お米由来の自然な甘味と風味が特長で、なかなかに上品な味わいの甘味料である。

 料理の「照り」というのは砂糖だけでは出しにくい。みりん、蜂蜜、水飴などが必要になる。F-どら焼きは照り出し枠に米飴を採用しているという訳だ。

 生地原材料の方に「水飴」の記載があるので、餡の方とは別物だと言うのが分かる。

 製造者は広島県の和菓子屋である「株式会社 にしき堂」。

 そして原材料名にある「(広島県製造)」。

 このことから、餡はにしき堂が自社生産し、生地液は外注生産していることが窺える。F-どら焼きは藤子・F・不二雄ミュージアムの売れ筋と思われるので、一定量を安定的に卸すために生地液生産を外注しているのだろう。

 にしき堂を軽く検索したら、ユニークなコラボ和菓子を多く手掛けているみたいだった。案件を多く抱えてそうなので、外注はキャパオーバーを防ぐための大切な施策なのだろう。それでもF-どら焼きの焼き上げは自社で行っていそうな辺りに、せめぎ合う合理的妥協とこだわりが垣間見える。絶対おもしろいので「次々に舞い込むコラボ案件とそれに立ち向かう開発スタッフたちのサクセスストーリー」みたいな感じで誰かドラマ化してほしい。あるいは私が取材に行きたい。

 話を戻そう。

 米飴を採用している理由は、恐らく風味の兼ね合いだ。

 水飴だとやや風味が弱いし、逆に蜂蜜は独自の風味が強い。

 F-どら焼きは甘さ控えめ。深い味わいがあるのに、くどさが驚くほど感じられない、大変に上品などら焼きだ。

 確かにこの味を出すなら、超ド甘スイーツ志向の蜂蜜類より、雅オホホの上品志向系たる米飴の方が向いているだろう。ものすごくちょうど良いところを突いてる感がある。


 それにしても、餡の原材料名にある「その他」とはなんなのだろう。割と規制ゆるゆるな食品表示においても、抜けてゆるゆるな表示である。

 どら焼きにドラえもんの絵が焼き付けてあったから、それに含まれる成分か何か……? 真相は謎である。

 でも、こういうのは推測してアレコレ想像するのも楽しい。このどら焼き、食品表示として名作すぎる。

(余談。F-どら焼きが粒餡ということは、ドラえもんも粒餡派だということだろうか? 私も粒餡派なのでシンパシーを感じる)


 次は生地材料の方を見ていこう。

 まず目を惹かれるのが「梅酒」。

 「ホワイ?どら焼きに梅酒?」と最初に見たときは驚いた。今まで頭の中には無い繋がりだった。

 しかし、改めて考えるとしっかり理に適っている。

 お菓子に旨味や風味を与えるため、酒類を使用するのは珍しいことではない。例えばパウンドケーキなどは、ラム酒がけっこう使われていたりする。

 それを鑑みた上で考えると……なるほど確かに、上品志向のどら焼きと、和風で爽やかな梅の風味は相性が良いだろう。むしろこの組み合わせしか無いとまで思わされる。

 F-どら焼きにくどさが無いのは、梅酒の効果でもあるのかもしれない。職人のレシピは本当に計算され尽くしている。末恐ろしい。


 お次の見所は「米粉」。

 今までの材料に比べると新規性は薄いが、お土産お菓子としては珍しい食材だ。

 使用目的は食感と風味だろう。米粉だと、小麦粉よりもモチモチとした食感になりやすい。

 実際F-どら焼きを食べた際も「しっとりモチモチ」みたいな食感でおいしかった。

 同一原料なので、餡の米飴とも風味的に馴染むだろう。

 表示順は砂糖に次ぐ位置なので、そこそこ多めに使用されていることが分かる。

 米粉は使用量が多すぎると加工難度が高くなり出来上がりに大きな影響を与える。小麦粉と米粉の最適な配合比率を導き出すにはたくさんの試行錯誤や、知識・経験から裏打ちされた職人勘が必要になる。開発は一筋縄ではいかなかったであろう。この辺りにもにしき堂さんの職人的なこだわりと努力が窺い知れる。


 そして最後にして一番の驚き原材料が「乳酸発酵卵白」だ。

 卵白が発酵? 卵白に乳酸?

 この文字列を見たとき、私の頭はクエスチョンマークで埋め尽くされた。なんだこの原材料。ガチではじめて見るぞ。

 食品表示ソムリエとして、この表記は見逃せない。私はすぐさまSurface Duoを叩き起こして、Googleの検索バーに「乳酸発酵卵白」と打ち込んだ。

 そして出てきたのが──そう「キユーピー」である(タイトル回収)。

 どうやら乳酸発酵卵白は、キユーピーが独自開発した新素材で、「ラクティーエッグ」の名で業者向けに販売されているらしい。

 日本食品工学会誌に寄せられたラクティーエッグに関する文献があったので確認してみると、おもしろいことがたくさん書いてある。

 まず、ラクティーエッグには卵白特有の硫化水素臭が無くなっており、代わりに爽やかな乳酸発酵の風味がある。

 そして驚くべきことに、ラクティーエッグは加熱しても固まらないらしい! 加熱しても卵白固まらせないとか可能なの??? ヤバない???

 しかしこれが可能であるらしい。どうやら卵白を乳酸発酵させると、上記の特長を兼ね備えたスーパー卵白を爆誕させられるそうな。

 卵白には「リゾチーム」なる抗菌性たんぱく質(酵素)が含まれていて、なおかつ乳酸菌の餌となる「糖」などがほとんど存在しない。このため本来は乳酸発酵が難しい食材なのだが、キユーピーの研究開発スタッフは「乳酸菌用の栄養素液の添加」「リゾチームの失活処理」「卵白での乳酸発酵に適した乳酸菌の選定」などの魔改造を施すことで、卵白を乳酸発酵させることに成功した。

 ラクティーエッグは「生臭くなくて風味が良い」「加熱しても凝固しない」という特異な機能性から、これまでの卵白とは違った利用ができる。

 例えばそう、どら焼きに「風味を爽やかにしながら、食感を向上させつつ、卵白のコク味をプラスする」とかだ。

 上載の文献によると、ラクティーエッグを4.5%配合したスポンジケーキは、比較対照品よりもしっとり感と柔らかさに優れ、水分含有量も数%ほど高いそうである。

 この高い保水性と食味の向上という特性はまさに、製造後日が経ってから食されるお土産のどら焼きにぴったりだ。爽やかな風味というのもF-どら焼きの方向性にそぐう。

 乳酸発酵卵白には他にも、お肉を柔らかくする効果などがあるらしい。後はプロテインにも向いとるとか。

 気になる人はぜひPDFをダウンロードして読んでみよう。


 しかしキユーピー、開発力がすごい。

 パンの製造販売業を営む家族によると、おそらくキユーピーは余った卵白の有効活用のために商品開発を頑張っているのでは、とのことだった。

 確かに、キユーピーの代表商品であるキユーピーマヨネーズは、全卵ではなく黄卵のみを使用したマヨネーズだ。

 つまり、マヨネーズを作れば作るほど卵白が余る。その数は途方もないものだろう。これを有効活用しない手はない。というか廃棄コストとかヤバそうなので有効活用するしかない。

 その結果の一つが乳酸発酵卵白なのだろう。

 他にもキユーピーは多くの卵系商品を開発・販売している。乳酸発酵卵白を調べた流れでキユーピータマゴの商品カタログを見ていたのだが、まああるわあるわ目新しい卵系食材。ちゃんとラクティーエッグもある。眺めているだけで相当楽しい。

 それにキユーピーの卵への情熱や企業理念、そしてたくましい商売魂も伝わってくる。

 にしき堂もそうだが、やはり企業はすごい。彼らの多大なる努力によって、私たちの食卓には美味しいご飯やどら焼きがもたらされるのだ。感謝ばかりである。


 以上が、F-どら焼き食品表示レビューである。


 それにしてもまさか、藤子・F・不二雄ミュージアムのどら焼きを通じて、キユーピーの好感度上がるとは思わなかった。風が吹いて桶屋が儲かるとはこのことか。

 やはり食品表示はおもしろい。ここには興味深い食品情報はもちろん、多くの創意工夫や人間ドラマまでもが隠されている。

 あなたもこの記事を通じて、食品表示を読みたくなったのではないだろうか?

 そしたらさあ、近くの食品パッケージを手に取り、天へと掲げ、そこに瞳を潜らせてみよう。


 健康オタク・不審者の型・その壱【仰天の構え】──!


 そこには新しい世界への扉が開いている。

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