「駐車禁止の標識」目線で語る、恋のウタ。 〔2019年03月28日 作〕 ====== Writoneの個人企画「空腹を満たそう」第1回のお題写真から書いた詩作です。当時はたくさん音声化していただいて、思い出深い作品の1つとなりました。 ……だというのに、他のサイトで公開することなく過ごしてしまう体たらく。Writoneが実質閉鎖してからだってもう随分経つので、OFUSEオンリー公開でいこうと思います。 今作も「フォローde朗読フリー」対象! 詳しい利用規約は「朗読フリーのお約束」にて。 https://ofuse.me/e/23767 ====== 【さやさや、うらら】 仙人になりたい。と、春が来るたびに思う。霞(かすみ)を食べて生きるというから、きっとその味も分かるはずだ。 愛らしい色カタチに見合う、優しくて温かみのある甘い味を夢想する。ただ1つ問題があるとすれば、触れるだけで精一杯という事実だろうか。 風とたわむれ、さやさや音立て枝先がゆれる。おいでおいでと誘われているようで嬉しくなるけれど、立ち尽くすことが仕事のようなものだから、歯がゆくも眺めるだけで季節が巡っていく。 ああ、どんな味がするのだろう。どんな香りがするのだろう。私にも伸ばせる手があったなら、せめて ひと撫でできるのに。 美しい君よ。あざやかに咲く花よ。 麗らかな日差しを浴びて陽気にほころぶ貴女が。幾度となく枝(て)を伸ばし触れてくれた貴女のことが。私は、好きで好きでたまらないのです。 切り離されても、どうか、また―― さやさや揺れて今年も散(さ)りゆく貴女に、「さよなら」の一言すら伝えられないこの身が恨めしい。 私の赤には、恋い慕う熱い気持ちが。その内を染める青には、先を望めない悲しみが詰まっている。
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