飼い主獣人スレッタとペット人間ミオリネさん:7-1(連載)

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7-1: 1  夏を控えたこの時期、毛のある私たちを悩ませるもの。そう、換毛です。 「だからこんなにブラシの種類あるのか……、どれ使えば良い?」 「普段のじゃなくて、アンダーコートの抜け毛を取る用のブラシがあるんです。そう、その広い奴ですね。それを毛並みに沿って梳いてくれると嬉しいです」  ミオリネさんは私が指さしたブラシを手に取りふむと少し思案した後、私の腕の辺りにちょんとブラシを触れさせた。案の定、もさっと冬毛が抜けて来る。 「うっわ、なん、え、ごそっと取れたんだけど……」 「そういうものなんです。ほんと凄い量抜けるんですよねぇ」  特にイヌは、歴史で習ったように昔昔は寒冷地の草原で暮らしていたらしい。一般的なネコに比べると明らかに換毛でのボリューム差が凄いのだ。その秘密が二重に生えている毛で、夏と同じ毛足の長いトップコートの下に、毛足の短いもふもふのアンダーコートが生えている。これのおかげで空気を逃すことなく、私たちは寒さをあまり感じないというわけだ。おかげで抜け毛の量がすごい。 「……ふふ、もさもさ抜けるから楽しくなってきたかも」  ミオリネさんは夢中でブラシを動かす。優しい手つきに、私は目を細めた。 2  夏休みを迎え、大量の課題にひぃひぃ言いながらもミオリネさんと長く一緒に居られる素晴らしい日々が始まりました。一般的なイヌは暑いのが苦手で、一般的なネコは寒いのが苦手。なので誰が決めた訳でも無いけれど、夏と冬の間は皆省エネモードで、街は全体的に弛緩した雰囲気になる。一方で夏は竜が、秋は冬眠前のクマが積極的に動くようになるから、軍とか探偵さんたちはいつも以上にピリピリし始める。実の所学校の長いお休み期間も、「遊びに行っていいよ」と言うよりはむしろ「自由にしてていいから年長の目の届くところに居なさい」という意味が強いらしい。実際、夏とか冬の間に他の街へ行くことはあっても、山とか川とか森とかで遊びたいというイヌネコは少ない。まず普通に暑さや雪で死にかねないし、皆竜やクマに襲われるのはゴメンだからだ。  ミオリネさんにブラシをかけられながら私はちらりと天井を見上げる。安アパートの冷房装置はたかが知れていて、まぁまぁ煩いし変な匂いがする。けれど今はかなり静かになったし、変な匂いもしなくなった。ミオリネさんが防音パッキンとフィルターを買ってきてくれたのだ。ミオリネさんは私が学校卒業したら引っ越そうと言ってくれているけれど、それまではこの安空調が相棒だ。 3 「ほんとちょっと怖い位抜けるんだけど。あんたがもう一鼻作れそう」  楽し気にブラシをかけてくれるミオリネさんが尻尾に触れる。尻尾はデリケートな部分だけれど、私は安心してその小さな手に尾を任せた。丁寧なグルーミング、巣の快適さを保ち向上させていくこと、それから週三回の交尾。私たちの縄張りをミオリネさんもまた大事にしてくれているという事実を確認するたびに、ミオリネさんって私の伴侶なんだなってしみじみしてしまう。  ヒトは毛が無いのと全身から水分を滲ませることで体温調整を行うらしく、その為ネコよりも更に暑さに強いらしい。その代わり水が大量に必要みたいだ。交尾のときとか、ミオリネさん全身しっとりさせててちょっと面白いんだよね。 「ミオリネさんの毛は生え変わんないんですかね?」  背中から首の後ろあたりをブラシが撫でていって、心地よさにぐぅと喉を鳴らす。終わったらミオリネさんの毛も梳かしてあげよう。 「生え変わってはいるんじゃない? 切らないとどんどん伸びるし」  ミオリネさんの頭の毛は出会った頃よりも伸びている。邪魔じゃないのかなぁと思うこともあるけれどミオリネさんは気にしていないみたい。 4 「それってまさか、おまたのお毛々もですか!?」  はっとした。ミオリネさんは頭だけじゃなく、おまたにも毛が生えている。なんでそんなところに毛を生やしているのか全く意味が分からないけれど、私は交尾や合間のイチャイチャの時に「生えてるなぁ」と感動していた。お毛々のおかげか、おまたはミオリネさんの匂いが強くするから好きだ。しかしあちらはミオリネさんの頭の毛ほどには伸びていない。これはどういうことだろう。 「……ぜっったい変な事考えてるでしょ」 「変じゃないです。ミオリネさんの総量が増えたら嬉しいなって思ってます」 「それを変な事つってんのよ。っていうか総量って言うな」  良く考えると私たちの毛も無限に伸び続けたりはせず、一定の長さまでしか伸びない。となると、おかしいのはミオリネさんの頭の毛と言うことになる。もしかして無限に伸びるのかな? じゃあじゃあ、10年後にはミオリネさんは……。 「だから変な事考えるなって言ってんの! なんなのその顔!」  鼻をぐいっと掌で押して、ミオリネさんは私の想像を中断させようとしてくる。怒っているわけではないのが分かるから、私もふざけてミオリネさんに抱き着く。 5 「お毛々長い方が、ミオリネさんの匂い強くなるかなーって考えてました」  彼女の頭に鼻をくっつけて思いっきり吸い込む。ミオリネさんの匂いだ。イヌの本能的なものなのかは分からないけれど、彼女の匂いを嗅ぐとなんだかとても安心する。暑いと体温を下げる為に口呼吸が増えるし、かといってカビ臭いエアコンは不快だ。そのせいでここしばらく少し不調が続いていたのだけれど、ミオリネさんがエアコンを直してくれたから思う存分彼女の匂いを嗅げて嬉しい。  ぺしっと叩かれる。少し離れて顔を伺うと、ブラシを掲げて指をくるくると横に回していた。ふむ? あ、仰向けになれってことか。腹を天井に向けて寝そべる。イヌにとってもネコにとってもこれは本当に信頼している相手にしかやらない特別な体勢だ。なにせすぐ起き上がれないからである。 「……前から訊きたかったんだけど、お腹にあるポッチって乳首であってる?」 「ん? はい、そうですよ?」  ちゃんとブラシで乳首をひっかけてしまわないよう避けつつ、ミオリネさんは毛を整えてくれる。乳首はオスメス両方にある、なんか硬いポッチだ。メスは妊娠すると乳房として膨らんで、お乳が出るようになる。 6 「つまり……イヌっておっぱい十個になる、ってこと……!?」 「あ、いえ、実際におっぱいとして膨らむのは上の四つだけですね」  ミオリネさんはなにやら戦慄していた。ミオリネさんのお胸も乳首も二つしかなくて、何故か妊娠してもいないのに膨らんでいる。聞くところによるとヒトの遠縁であるお猿さんも似た特徴があるから、お胸を膨らませるのが標準的な性的アピールらしい。最初は妊娠しているのかと思ってぎょっとしたけれど、ふわふわしてて触り心地が良くて、舐めると気持ちがいいのかかわいい声を上げてくれるから、ミオリネさんのおっぱいが膨らんでて良かったなぁと思う。 「じゃあ下の六つは何…?」 「うーん、……予備、とか?」  謎だ。そう言えば、何故オスにも乳首があるのだろう。予備なんだろうか? 「その……ごめん、ってのも変なんだけど」  ミオリネさんはなにやら俯いて、歯切れ悪くそう口にした。 「あんた、成り行きで私のことパートナーにしちゃったでしょ? 見たよ。あんた当てのお見合いの手紙。雌雄同体だからオスメス選び放題なんでしょう?」 7  国の補助制度の中には純潔種の保護のための制度がある。特に、そもそも頭数が少ない大型種は伴侶を見つけられないまま命を落とすことも多く、そのため大型種が純潔の仔をたくさん産めるよう、公的な援助があるのだ。ネコはともかく、イヌは一つ間違えると一生仔を持てなくなるので、とても大事な制度だ。  まぁ、だからお見合いとか、そりゃもう凄かったりする。軍に付属した大型種の純潔婚斡旋部門みたいなのがあって、毎月伴侶候補の写真や毛を束ねたものを送り付けてくるのだ。大型種でダイアの私もそれは例外ではなく、むしろ雌雄同体だからこそ送られてくる量もすさまじかった。 「んぇ? でも私のツガイはミオリネさんですけど……」 「だから、仔を持てないでしょ、って話よ。私は孕めないし、孕ませられない」  確かにそうだ。イヌ同士ネコ同士であっても同種以外では仔を孕める確率は下がることが分かっている。とはいえハーフやミックスのイヌネコが居ないわけではない。身近なところだとラウダさんがそうだ。……あれ、養子なんだっけ? どうだったっけ、忘れちゃった。だから私ラウダさんに嫌われてるんだよなぁ。 「うーん、まぁ難しいのは確かですけども、無理ではないんじゃないですか?」 8  生物学的なあれそれとかは分からないので、とりあえずあっけらかんとそう言った。能天気な意見かもしれないが、試してみたいことには分からない。確率が低いなら何度だって交尾すればいいだけの話だろう。ミオリネさんはまだ納得できないという目をしていた。むむむ。 「試してみて無理そうなら、そしたら私一鼻で孕みますよ」 「……はぁ!?」  久しぶりの大声に耳をペッと伏せてから、ニコニコと笑いかける。 「雌雄同体ですから、理論上は私だけで仔が作れます」  こっちは不可能な話ではない。歴史上もイヌネコ戦争期に劣勢になり滅ぶ寸前まで行ったリオ種が単体で個体数を増やして盛り返した例がある。ただ、この時の影響でリオ種は遺伝的欠陥を抱えることになった。ネコの中では異常な社会性やプライドの高さなどは、そのせいではないかと言われている。 「でもそれは……、っ!?」  何か言いかけたミオリネさんが、響いた重低音にパッと自室に顔を向ける。そこからは小さく証券市場放送が流れ聞こえていた。どうしたんだろう? 20260710 by トランジスタ 本投稿の無断での転載・複製・複写・販売・AI学習を禁止します。 スレちゃん副乳なんです!!!!(でけぇ声) イヌは左右に均等に5個ずつ、ネコは4つずつ乳首があります。上四つだけ膨らむ様になったのは文明化による少産傾向が影響していますね。だから犬スレちゃんがもし妊娠したらOPPAIは4つになります。夢があるな。きっとミさんもそう言ってくれる。 ・雌雄同体だから単体で生殖可能:理論上はそうですが、あんまり推奨はされていません。国の純潔婚推進部門は精子バンク的なものを運用していますが、なので実際現実的な仔を持つための手段は“同種のオスの精子を使う”ことですが、残念ながらスレちゃんはオスでもありメスでもあるため、同種の別のオスの精子を使うと多分生まれて来た仔を殺すか育児放棄することになります。なので最初からそれを除外して喋っちゃってるんですよね。はは。

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