100年先へ i love you を(単発掌編)

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100年先へ i love you を 1  いつか私達も年を取り、おばあちゃんになるんだなと、ふと思った。 「ミオリネさんって、多分幾つになってもミオリネさんだと思います」 「なぁに、いきなり」  私が真剣な顔でそう言うと、ミオリネさんは呆れたように笑った。手にしたカップを置いて、突拍子の無いことを言い始めた私の様子を伺う。 「いえその、ミオリネさんって昔から綺麗な人だなって思っていたんですけど」 「昔って学生だった頃?」  頷く。出会った頃から、ミオリネさんは綺麗な人だった。いや、綺麗って言葉だけじゃミオリネさんを表すことはできない気がする。 「綺麗……というか、美しい? 美麗な? 容姿端麗、眉目秀麗、明眸皓歯……」  必死で頭を働かせ、彼女の美しさを称える言葉を並べてみる。子供たちに教えるようになったから、昔に比べれば私も随分語彙が増えた。ミオリネさんはくすくすと私の様子を面白がって笑っている。夏を間近に控えた温かいが不快ではない風が、午前中独特のさわやかさで吹き抜けていった。 「とにかく、私にとってミオリネさんって、とっっても綺麗な人なんです」 2  ミオリネさんはカップの中のコーヒーを口に含みつつ片目を閉じて私を見る。そうなんだ、それで? という声が聞こえるようだ。 「ミオリネさんは今でも私にとってはとっっても綺麗で、きっとこれからもずっと綺麗なままなんだろうなって思って、……それって凄いことです」  思えば、こういう口にしないでも伝わるようなやり取りというのも、学生の頃からしたら考えられないほど長く一緒にいるからだ。17歳だった時の私達は、10年後の今の私達のことなんて想像できないくらい現実でいっぱいいっぱいで、今の私達がこうして心の深い所でお互いを当たり前に感じるような時間を過ごしていることも、思い浮かべることすらできないのだ。 「私達が一緒になって、もう長いじゃないですか。私達がこのまま一緒に年を取っていつかおばあちゃんになっても、その時もまだミオリネさんのことを綺麗だなって思うんだろうなって思ったら……なんか感動しました」 「あははっ、なにそれ。感動するとこ?」  ミオリネさんは吹き出してしまう。私があんまりにも真剣な顔をしているから、おもしろくなってしまったようだ。むん、と更に大真面目な顔をしておく。 3 「しますよぉ。もしかしたら私だけしわくちゃになっちゃうかもなんですよ?」 「あんたが皺くちゃなら私も皺くちゃじゃない? 皺くちゃ夫婦よ」  私が真剣な顔でそう続けると、ツボに入ったらしいミオリネさんは更に笑う。楽しそうでなによりだ。ミオリネさんって私がミオリネさんのこと笑わせようとすると、凄い楽しそうにするんだよね。好きだなって思われてるのを、感じる。 「顔なんて皺くちゃなってさ、あんたが褒めてくれた目も歯もボロボロになって……それでも毎日楽しく過ごしてるような元気なババアになりたいかな」  笑いを収めたミオリネさんは、ふっと私に笑いかける。昔に比べてはっきりと愛おしいと伝えてきてくれる目と、私がドキッとしちゃうのを分かっている笑み。テーブルの上に置いていた手を上から握られて、何年経っても変わらないときめきに心臓が跳ねてしまう。ねぇ、とミオリネさんは囁いた。 「私達さ、何事も無かったらこれから50年くらい一緒に居るんだよ」  現代人の平均寿命は女性だと90年。私は10年前の後遺症があるから、そこを考慮したんだろうか。一緒に居てくれると言ってくれるのは嬉しいけども……。 「いやです」 4  ぷん、と怒りを表現する為に頬を膨らませる。ミオリネさんは動揺していない。 「100年は一緒に居ます。50年ぽっちじゃ私、満足できませんので」  ガンダムに乗った後遺症? 平均寿命? そんなのは知ったことではない。 「ふは、あははっ! あんたってほんと……。100年一緒に居てくれるんだ?」  ミオリネさんの細くて白い指が私の頬を撫でる。きっとそこにある傷痕をなぞっているのだろう。勿論、何事も無かったらの話なのだ。そんなことは分かっている。世界はいつだって唐突に何かを奪っていくし、大きな犠牲を強要してくることを、私達はもう知っている。でもそれが何だって言うのだ。 「はい! 一緒に年取って、おばあちゃんになるまで一緒なんです!」 「皺くちゃババアかもしれないよ?」 「しわくちゃババアでもミオリネさんはミオリネさんです!」  関係ない。知ったことではない。きっとおばあちゃんになった私達もこうやって笑い合ってる筈なんだ。一緒に過ごした時間の数だけ、重ねた年の数だけ愛おしさが増すのなら。100年後のミオリネさんだって、私にとっては綺麗だろう。 「100年先だって愛してます、ミオリネさん!」 20260702 by トランジスタ 本投稿の無断での転載・複製・複写・販売・AI学習を禁止します。

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